昭和56年に重要無形民俗文化財「 南薩摩の十五夜行事 」に指定された坊津・枕崎・知覧の各集落では、準備から当日・終了後まで、一連の多彩な習俗が繰り広げられる。薩摩半島における十五夜綱引きの基本構造は、①材料集め→②綱作り→③綱引き→④綱の利用と綱流し。 この順に、筆者の記録映像で、南薩摩の十五夜行事をめぐってみよう。①材料集め…上之坊の火とぼし、平原の茅カル、②綱作り…草野の庭広げ式綱練り、泊の道伸べ式綱練り、上之坊の櫓かけ式綱練り、③綱引き…上之坊の綱引き・お月さんづくり、門之浦のヨコビキ、④綱の利用と綱流し…泊の十五夜踊り・綱引きから綱流し習俗、浮辺のソラヨイ・相撲。 次に、これらの多彩な習俗から比較検討を試みたい。例えば、②綱作りでは、庭広げ式・道伸べ式・櫓かけ式の三種類の綱練り習俗がみれらることが分かった。このうち庭練りが最も素朴で、たくさんの綱練り要員と長い荒縄が必要な道練りにその後発展。道練りで三本綱から一本の大綱へ練りあげる位置の添え木が櫓に発展し、櫓練りができたのではないかと考えられる。そのほかにも、十五夜歌と綱曳きずり、カヤ被りとソラヨイ装束、二才衆と子供組の役割など、検討課題に尽きない。 コロナ禍を経て一連の習俗を続けられなくなったが、規模を縮小しても、大切に伝えていきたい「要」だけは懸命に伝承しようと、各地で模索が続いている。今後も、基本構造を意識しながら、調査と比較・検討を、続けていきたい。 (2024・8・31 黎明館での「鹿児島民俗学会例会」口頭発表要旨。井上賢一)
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